「セットバック」とは?一戸建て建築や土地探しの際の注意点について

高台の住宅街

土地探しをする中で「セットバック」という用語を目にしたことはありませんか。

なんとなく相場よりも安い傾向ということもあり「訳アリ物件なのではないか」と、心配になる方もいるでしょう。

今回は、住宅の取得や土地探しをしている方が知っておきたいセットバックの意味や、メリット・注意点について解説をします。

セットバック物件が候補の一つになるかもしれませんので、ぜひ参考にしてみてください。

「セットバック」とは?

住宅街の風景

セットバック(set back)は「後退」を意味します。

建物を建てる際に土地が面している道路の幅が「4m未満」の場合、道路境界線をセットバック(後退)させることで、前面道路の幅を「4m以上確保」する必要があります。

そのため、「要セットバック」という項目を見つけた際には、「土地購入後に敷地の境界線を後退させなければならない」と、覚えておくとよいでしょう。

セットバックが必要な理由&目的

家のミニチュア

建築基準法では、建築物の敷地は「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と定めています。

これは「接道義務」と言い、災害時に緊急車両が通れるようにするため1950年に制定された法律です。

建築時に建物を後退することにより、車が2台すれ違える4mの道幅を確保する目的で、セットバックが必要となっています。

セットバックの計算方法

まずは「(建築基準法で定められた幅員−実際の幅員)×1/2」で、セットバックする距離を求めましょう。

さらに「セットバックする距離×間口」と計算すれば、セットバックする面積を計算することができます。

たとえば、幅員が3m、間口は5mとして計算してみましょう。

・セットバックする距離:(4m−3m)×1/2=0.5m
・セットバックする面積:0.5m×5m=2.5㎡

上記のような計算で、セットバックする距離や面積を求められます。

セットバックのメリット

電卓と設計図電卓と設計図と家の模型

ここまでのセットバックの解説でいくと、なんだか難しくてデメリットが多そうと思われがちですが、もちろんメリットも多くあります。

見通しが良くなり通行が快適になる

継続的に道幅を整えていくことで、見通しがよくなり住民が快適に暮らせます。見通しがよくなれば交通事故のリスクも減らせるでしょう。

4mの道幅があれば、対向車とすれ違うことができず、すれ違いができずに片方の車が待つようなこともなくなります。

防犯・防災効果が向上する

道幅が広くなり、見通しが良くなることは防犯にもつながります。

特にお子様や女性にとって、暗い道路や道幅の狭い道路は危険な場所になることも。夜間でも4mとしっかり道幅があり見通しが良い道路は、安心感が違うはずです。

また、向かい側との距離が遠くなることで、地震による倒壊や火災の延焼被害のリスクも抑えることができます。

安い値段で購入できることがある

セットバックが必要な土地は、道幅が狭く不便だったり、日照りが悪かったりと不人気な傾向にあることから、相場よりも安く土地を購入できることがあります。

建物の建て方やインテリアを工夫することで改善もできるので、場所にこだわりがある方にとっては、土地代を抑えられるチャンスです。

セットバックの注意点

工具と家の模型

メリットの多いセットバックですが、いくつか注意しておくべき点もあります。

費用は土地所有者の負担になる

セットバックの費用は土地所有者の負担となります。

費用は30~80万円ほどと、土地の形状やセットバックの面積によって違いがあります。

しかし、各地方自治体の「狭い道路拡幅整備事業」として補助金制度も整ってきていますので、負担軽減のためにあらかじめ確認をしておきましょう。

セットバックを踏まえ建築可能面積を確認する

敷地の境界線を後退させることで、土地面積が狭くなるため、建築可能面積を確認する必要があります。

そもそも、どの程度の大きさの建物を造りたいと考えているのか、そこで改めて検討するとよいでしょう。

また、セットバックした土地は道路となるため、もちろん駐車利用も不可となります。特に自家用車のある方は注意しておきましょう。

非課税申告を忘れないようにする

不動産に掛かる固定資産税とは違い、セットバック部分の土地には税金が掛かりません。

しかし、非課税申告をしない限り、税金は免除にならないことを忘れないようにしましょう。

非課税申告は各自治体の役所の管轄になり、毎年の届け出が必要です。

前面道路が私道か公道かを確認する

個人が所有する道路を「私道」とよび、国や都道府県、市町村等が所有する道路を「公道」といいます。前面道路が公道の場合、寄附(無償譲渡)、無償使用承諾、自己管理の3つを自治体から提示されることが多いです。

自己管理であれば全て自己負担となりますが、無償譲渡や無償使用承諾であれば、自治体の管理や負担となります。

また、名称のせいで勘違いをしがちですが、私道は道路であるため自由に使うことはできません。

しかし、道路の整備等は全て自己負担となるため、いずれにせよ不動産業者に確認をしながら、慎重に検討する必要があります。

セットバックは適切な建築計画で問題なし!

設計図を見る男女

本記事では、セットバックのメリットや注意点を解説しました。

セットバックは建築制限や費用の負担といったデメリットはあるものの、割安になる場合があったり、今後見通しの良い道路になることだったり、メリットがあるのも事実。

セットバックを踏まえて最低な建築計画を立てることで、快適な理想の住まいを手に入れることも可能です。

だからこそ要セットバックだからといって、すぐさま諦めることはありません。

一概に良し悪しが判断できないのがセットバック物件ですので、建築条件やコスト面、私道公道の関係も含めトータルでの検討をしましょう。建築会社や不動産会社など専門家に相談することもおすすめします。

 

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太田 貴也▶ twitter▶ Instagram